長友不在のインテル、今季最大の苦戦も勝利に変えた“耐久力と狡猾さ” - サッカー魂

長友不在のインテル、今季最大の苦戦も勝利に変えた“耐久力と狡猾さ”

長友不在のインテル、今季最大の苦戦も勝利に変えた“耐久力と狡猾さ” 11/26(日) 20:01配信 フットボールチャンネル 長友不在のインテル、今季最大の苦戦も勝利に変えた“耐久力と狡猾さ” 2試合連続不出場に終わった長友佑都【写真:Getty Images】  インテルは25日に行われたセリエA第14節の試合でカリアリと対戦。今季で最も苦しい内容だったと言うべき厳しい戦いを強いられながらも3-1で勝利を収めた。ルチアーノ・スパレッティ監督のチームからは、去年までであれば負けていたような試合を勝利に変える新たな力を見て取ることができた。(取材・文:神尾光臣【イタリア】)

●試合をコントロールされるも終わってみれば3-1勝利

 試合をコントロールしていたのはカリアリだった。今季途中就任したディエゴ・ロペス監督のもと、カリアリは見事なまでに戦術を練り込み、インテルのサッカーを破壊しに掛かっていた。

 3-5-2のシステムのもと、高い位置からプレスをかける。狙い撃ちにしたのは、ビルドアップの源泉となるCBとボランチ2枚のエリアだ。しかも、ただ2トップが追い回すだけでなく、後方も連動して距離を詰めてボールホルダーを挟み込んだ。

 インテルのMF陣よりも常に一歩早く、鋭い出足でボールを奪うとスピーディーに展開。かつてピルロの後継者とさえ期待されたルカ・チガリーニと、現在急成長中の20歳ニッコロ・バレッラを中心に、インテルの守備が整う前に左右に展開して振り回した。16分、右クロスに反応したレオナルド・パボレッティのボレーをサミル・ハンダノビッチが奇跡的な反応で止める。インテルの苦戦は目にも明らかで、彼らにとっては今シーズンで一番苦しめられた試合だったかもしれない。

 だが、そんな内容も終わってみれば3-1だ。相手に圧倒されながら先制し、後半も攻め込まれながらあっさり追加点も奪い、リードを1点に詰められたら駄目押しの3点目。この日の勝利でクラブ歴代記録となる勝ち点36を積み上げ、暫定的に首位に立ったインテルが見せたのは、苦しい試合をものにする耐久力と狡猾さ。そしてそこには、ルチャーノ・スパレッティ監督のもとで培った戦術的な強さが現れていた。

●細かな守備戦術修正で耐えて、3点とも得意な形でゴール

 まず一つ目のポイントは、インテルが29分の先制点のチャンスまでにしっかり耐えたこと。カリアリの猛攻にさらされる中、彼らは細かく守備戦術の修正を図って対応した。

 インテルは4バックで守る。ところがこの試合はハイプレスでボールを奪われた後、相手のウイングバックの対応が遅れてチャンスを作られた。ディフェンスラインが守備を整えても、MFの戻りがかみ合わず、アウトサイドがガラ空きになってしまうのである。

 そこでスパレッティ監督は、18分過ぎに指示を出した。守備の際は5バックにするという対応だ。ダニーロ・ダンブロージオが中央に絞り、アントニオ・カンドレーバが右サイド深くに引き、左サイドでは2試合連続でスタメン出場を果たしたダビデ・サントンが張る。こうしてアウトサイドを抑え、なんとか相手にフリーでクロスを上げさせるような状況は回避した。

 そしてもう一つのポイントは、戦術的に仕込まれた武器があったということ。この日インテルが重ねた3点は全て、右サイドからの速攻だった。その全てにクロスの名手カンドレーバが絡んでいるが、彼の攻撃がちゃんと実るのもチーム戦術の浸透あってのことだ。

 1点目は、右クロスに反応して裏へと飛び出したイバン・ペリシッチの動きが決定的となった。左でボールの推進役となるクロアチア代表MFは、逆サイドからの攻撃にはファーでストライカー的な詰めを行う。DFの背後を取って鋭角に走り、クロスに反応する。折り返しが中央のマウロ・イカルディに渡り、ゴールを呼んだ。

 2点目、少ないパスでゴールへと到達するというチームの約束事が実った。ボールを奪うと、右のオープンスペースへ飛び出したカンドレーバに一気に展開される。スピーディーな縦の展開を完結させるべく味方も動き出し、カリアリ守備陣の戻りが間に合わない中央のスペースにはマルセロ・ブロゾビッチがちゃんと走り込んでおり、あとはシンプルに折り返すだけで得点へと繋がった。3点目は、サイドで一旦ボールをキープするカンドレーバをフォローして、ロベルト・ガリアルディーニがタイミング良く飛び出す。この動きにカリアリのDFラインは揺さぶられ、最終的にイカルディをフリーにしてしまった。

●エース・イカルディを筆頭に選手個々が成長。長友の出場は…?

 そして3つ目のポイントは、スパレッティの指導のもとで技量とコンディションを上げる個々の存在。とりわけこの日は、2ゴールを挙げたイカルディの動きにそれがよく現れていた。

 エリア内での得点感覚を存分に活かした2つのシュートシーンもさることながら、目を見張ったのはそれ以外のプレイだ。守備も献身的にこなし、一方で味方がボールを保持すればフリーランを惜しまない。裏を狙ってダッシュし、中へと外へと流れる。こうしてDFラインを押し下げ、味方にチャンスを作りやすくするスペースを捻出した。

 さらに、抜けばチャンスになるところでは果敢にドリブルさえ仕掛ける。62分のカウンターで、前線にフォローがなく相手CB3人が寄り付く状態ながら、華麗なボールコントロールで1人目のマークを外してボールを運ぶ。最終的には相手のペナルティーエリア手前でファウルを取り、FKを呼び込んでいた。

 インテルに移籍してからのイカルディは、エリア内の得点感覚にものを言わせる典型的なストライカーとしてプレイしていた。つまり点を決めるときは派手だが、ボールが来なければ試合の流れから消えてしまう選手でもあった。だが今季は、前線でさまざまなプレイを実行し、時には単独でも相手DFにまとめて脅威を与えている。著しい成長が感じられる選手の1人だ。

 格下相手に脆さをさらけ出す昨季までのインテルであれば、この日のカリアリには負けていたであろうところ。これをねじ伏せられる力が培われたのは、やはりスパレッティ監督のもと、チームとしても個人としてもサッカーの質が磨かれているからだろう。

 一方長友佑都もその中で評価を上げた一人だが、今節は前節アタランタ戦同様サントンの左SB起用が踏襲され出番はなかった。ただカップ戦が入る12月には「幾分のローテーションもする」とスパレッティ監督も予告している。出番が回った時には、攻守に渡って一層盤石なプレイを見せてくれることに期待したい。

(取材・文:神尾光臣【イタリア】) フットボールチャンネル

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